数学とは美しいものなのだ

 小川洋子博士の愛した数式』を読了。小川洋子はつい最近読むようになった作家なのだけれど、この本はすごくいいと思う。今まで読んだ何冊かよりも断然いい。記憶力がたったの80分しか持たない数学者、その家に家政婦として働きに行く私、そしてタイガースファンの10歳の息子ルート。この3人の穏やかで、でもすこしだけ危なさをはらんだ生活を静かに描いている本。忘れたくないのに忘れてしまう、忘れさせられてしまうというのはどんなにつらくて切ないことなんだろう。どんなに覚えていたくてもそれがかなわないなんて、そんなのもはや拷問でしかないのに。そしてその博士を陰から支える私とルート。年末にいい本を読んだと思う。小川洋子の本、来年はもっと読もう。