約束された場所へ

 仕事が終わってから、ふと思い立ってWATARIDORIを観に行ってきた。アカデミー賞ノミネート、というのがすごく納得できる作品だったと思う。
 映画の内容はごくごく単純で、いろんな渡り鳥が旅をしていくさまをただ淡々と追いかけているだけ。でもどうしてこんなに食い入るように見てしまうんだろう、と考えて、ひとつ思い当たったことがある。私は「ニルスの不思議な旅」が大好きだったんだよね、小さいとき。あれも、ガンの群れに、ニルスとキャロットとガチョウのモルテンがくっついていって一緒に旅をする話。どうして旅をするんだろうって不思議に思って親に聞いたのが、渡り鳥についてはじめて知ったときだったと思う。で、このWATARIDORI本編にはガンの群れがたくさん出てくるの。先頭に立って飛んでいるのがアッカ隊長で、最後のほうにいるのがモルテンだ、って変なイメージを持って観てしまった。
 でも渡り鳥の旅は過酷。ただ生き延びるために、何千キロも何万キロも飛びつづけるだなんて恐ろしくなるくらい。もちろんその旅の間じゅう、命は常に危険にさらされている。人間に撃たれたり、ほかの動物に狙われたり。ぬかるみみたいなところにはまってしまって飛び立てなくなってしまう鳥もいる。みんなが一斉に飛び立ったのにそれに遅れてしまって、たった1羽で取り残されてしまった鳥もいる。生きるために常に旅をし続けなければならないなんて、なんて過酷な運命。だけど、鳥たちは黙々と飛びつづける。
 鳥って綺麗だなあと思った。いろんな種類の鳥が出てくるんだけど、私がいちばん気に入ったのはやっぱりガン。白鳥や鶴、鷲も出てくるんだけど、ガンの何がいいかって、ほかの鳥たちに比べて決して大きいとはいえない体をいっぱいに使って、羽を一生懸命上下させて力の限り飛んでいる、というところがいいの。ゆうゆうと飛ぶ鷲もいいなと思うけど、この映画に関しては、ガンのほうが私には魅力的だった。あとはペンギン! あのてとてと歩く感じがいい。ナレーションも極限まで抑えてあって、音楽もすごくよかった。とにかく鳥を観て、といいたい作品。私もニルスみたいに背中に乗って旅をしてみたいー。