しつけの失敗でも親のせいでもないのだ

 見る予定ではなかったのに、21時に母がまわしたチャンネルに釘づけになってしまった。日テレのスーパーテレビ。今日は「我が子は自閉症」という内容だった。
 自閉症って知ってますか、という問いかけに対して、心の病気だとかしつけがうまくいかなかった子がなるものと答える人があまりにも多いのに、まずびっくりしてしまった。自閉症は脳の病気で、しかも先天性のものだ。だから心の病気でも、しつけに失敗したからなるものでもない。まずその間違った認識を正すところからはじめなければならないのだ。
 私の母は短大で音楽を教える傍ら、ボランティアで音楽療法活動をしている。老人ホームや介護施設、デイサービスセンターなどに行って、童謡や手遊びでコミュニケーションを図り、心を開いてもらえるような活動をしているのだ。以前は私もそれを手伝っていたので、お年寄りや精神に障害を抱える人たちと触れあう機会は、ほかの人よりすこしだけ多いかもしれない。でも、最初に行ったときはやっぱりびっくりした。奇声を発したり、えんえんとひとりでしゃべっていたり、人のいうことなんかちっとも聞いてなさそうな人がいて、このなかで音楽療法をするのか、と気分が重くなった(もちろんそうじゃない人もたくさんいる)。あとで訊いたら、自閉症の人たちはそういうことする人もいるから、それが個性だと思って無理に従わせないで、と言われた。たしかに普通にコミュニケーションをとるのは難しかったりするのだけれど、たとえば車の種類にすごく詳しかったり、10年後の何月何日が何曜日かというのがすぐ答えられたり、突出した力を持っている人もいる。最初はおっかなびっくりしか対応できなかったけれど、慣れればどうってことはない。
 でも、ほんのすこししか関わらない私のような人間と違って、常に向き合っていなければならない親は大変だ。世間からの偏見の目もあるのだ。どれだけ追いつめられることだろう。番組のなかに出てきた親御さんの、「息子を価値の低い人間だと思っていた」という言葉が、悲しいけれど現実なのだろう。それでもみんななんとかして生きていこうとして模索しているのだ。ちょっと知ったつもりの私みたいな人間が、いちばん鼻持ちならないかもしれないとも思う。
 じゃあ共存していくためにはどうしたらいいのか。「心のバリアフリー」なんて、言葉では簡単に言えるけど、実際にできるかどうかと問われたら答えはノーだ。その意識からまず変えていかなくちゃならない。難しいことだけど、これからの社会には、どれだけ人に優しい環境でどうやって生きていくかということがいちばん問われるのだと思う。そのためには私たちも偏見を持っちゃいけない。本当に難しいけど。