太鼓の音が、いつか聴こえるだろうか

 村上春樹『遠い太鼓』を読了。この本はギリシャとイタリアの紀行文をまとめたものなのだけれど、普通の紀行文とは、やっぱり村上春樹だけあってちょっと違う。旅行記って、ハプニングはあってもたいていいい方向に転んで、いい経験でした、いい国でした、と終わってしまうものが多い。けれど、この本は違う。そういう部分ももちろんあるけれど、率直に村上春樹自身が感じたことが書いてある。村上春樹の、あの独特のぶつぶつ感(半分諦めながら文章でぶつぶつ文句を言っている感じ)が存分に発揮されているのだ。理不尽な思いもたくさんしている。でもその反面、優しい親切な人たちに会ったときに、その優しさを直接肌で感じている。私はイタリアにもギリシャにも行ったことがないけれど、いつか行ってみたいなあと思う。そのときには、この本を必ず持って行きたい。