外国語は哀しい

 村上春樹『やがて哀しき外国語』を読了。自分自身でも「僕はどこにも属していない人間だ」としばしば書いていた村上春樹が、何の因果かプリンストン大学に招かれ、アメリカに住んでいる間に書き綴ったエッセイ。この人は本当に長く外国生活を送っているけれど、アメリカという国は、おそらく村上春樹にとって特別な国だったんじゃないだろうか。カポーティフィッツジェラルドが好きで、ジャズが好きで、意識はしていなくても憧れのようなものがあったんじゃないだろうか(これは勝手な推測だけれども)。でも、住む国が変わっても、村上春樹は無理をしてその国に合わせようとはしていないように見える。なんだか変じゃないの、とあの口調でぶつぶつ言いながら、それなりに妥協して居心地をよくしようとしている。もちろん、すべてがうまくいくわけじゃなくて、床屋さんに関してのように試行錯誤を繰り返しているのだけれど。たしかに「心情の記念写真」と言える1冊かもしれない。後日附記の、村上春樹のいろいろな表情の似顔絵がまた気に入った。