鍛えられた結果

 村上春樹『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』を読了。この人のエッセイの肩の凝らなさは相変わらずで、今までの村上朝日堂シリーズよりもずっと笑える話が多い。当たり前なんだけど、作家も普通の人間なんだなあと思う。すごーくわかる、と思った項は、空中浮遊の夢についてのもの。私もよく空を飛ぶ夢を見るんだけど、私はすごーく空高く飛ぶのだ。ということは、この本によると私は子供らしいのだ(否定すらできない)。空中浮遊やラブホテルの名前、裸で家事をする主婦にすごくこだわったり、村上春樹独特の視点はやっぱりおもしろい。それからひとつ、村上春樹の本を読んでいて思ったことは、走ることって案外おもしろそうだなあということ。私は劇的な運動音痴で(水泳とスキーとなぎなたを人並みにしかできない。それ以外はぜんぜんできない)、走るなんて最も憎むべき行為のひとつだ。だけど、村上春樹がジョギングについて書いている文章を読むと、ついうっかり走るのもよさそうだなあ、なんて思ってしまうのだ。実際にやったってそう長く続けられないのは目に見えているけれど、私に走ってもいいかも、なんて思わせる作家は村上春樹ただ1人だ。