静かな心

 小川洋子『深き心の底より』を読了。小川洋子の小説はそれほどたくさん読んでいるわけではないけれど、すごーく静かだなあといつ読んでも思う。光が当たらないところでひっそり息づいているような。その印象は、このエッセイを読んでもまったく変わらなかった。変わらないどころか、この人の生活自体がひっそりと慎ましやかなんじゃないかなあと思わせられる。自分をすこし離れたところで見ている目が涼しいせいかもしれない。アンネ・フランクについての記述が多いところなどは、きっと小川洋子自身、幼かったときから何回も『アンネの日記』を読んだんだろうなあと思う。それとひとつ驚きだったのが、金光教の信者だということだ。金光教がどういうものなのかということを私はまったく知らないけれど、この穏やかで静かな心は、もしかしたら宗教という個人的に絶対なものを信じているからなのかもしれないと思う。小説、もっと読んでみたい。