この硬質な感じ

 領家高子『墨堤』を読了。この作家さんは、ある日記書きさんに教えていただいた人。それまでは、失礼なことだけれど全然聞いたこともなかった。でも、いったん読んでみたら、この作家はまると思う。すくなくとも私にはすごく嬉しい作家の登場だった。この硬質な感じ。もしかしたらとっつきにくいと思う人もいるかもしれないけれど、私にとってはこの背筋のすこし伸びる感じがすごく嬉しかった。そして、この背筋の伸びる感じは、この本の主人公の芳恵にも通じている。芸で身を立てることを選んだ女性。そんな人が、年齢も地位もまったく違う黒川と出会い、その黒川の子供を産む直前からこの物語ははじまる。しゃんとしている女性、というのが芳恵の印象。それが、いろいろな出来事によってすこしずつ変わっていく。芳恵も黒川も。変わっていくことのつらさと悲しさ。でも、それを感情に流されずに書いている。すごくいい作家だと思う、この領家高子。ほかの本ももっと読んでみたいなあ。