介護文学という分野があるならば

 レベッカ・ブラウン『家庭の医学』を読了。この本はずっと読みたくて、気づいたときに探したりしてたんだけどなかなか見つけられなかったのだ(初版は2002年10月)。翻訳物は私はあんまり得意じゃないのだけれど、レベッカ・ブラウンの本は安心して読んでいられる。この本は、だからすごく期待して読んだのだけれど、その期待を裏切らないものだった。ガンに冒された著者の母。その母を介護しながら、徐々に死に向かって歩いていくさまを描いた本。概して病気をしている人を看護している様子なんて大げさだったり感情的になったりしがちなものだけれど、この本は視線が静かなところにその特徴があると思う(川上弘美も、帯で「大切な人の病と死を扱ったという理由からではなく、それらの扱いの客観性ゆえに、本書はまことに聖なるものとなったのである。」と書いている)。大切な人を見送るというのはつらくて悲しいことなのに、こんなに静かな目で見つめられたらなす術がないと思う。透明な目、という言葉が頭に浮かんだ。